2021年5月25日火曜日

う蝕は防げるのか?

 みなさんこんにちわ、前川です。


雨は大嫌いです。梅雨大嫌いです。

なのに神山K先生とcampに行くと、彼は雨男なのでかなりの確率で雨が降るため、

恨んでいます。

彼は頑なに認めようとはせず困ったもんです。


さて前々回からボクの回、3回にわたり、cariology(う蝕学について連載していっていますが、今回第三回、最終回です。


今回は、第三回


第一回 : う蝕の病因論 (なぜ虫歯ができてしまうのか)

第二回 : う蝕の概念 (現在のう蝕というものの捉え方)

第三回 : う蝕のマネージメント (う蝕をどう予防、治療していくべきか)


う蝕をどう予防し、どう治療していくか。です


第一回では、なぜう蝕ができてしまうのか、でした。

第二回では、う蝕の概念でした。


復習ですが、

う蝕は多因子疾患です。何か一つの要因で疾患が起こるわけではありません。

ブラッシングが適切か、甘いものや炭水化物の摂取の仕方はどうか、リスクはどうか、

フッ化物は使用しているか、唾液はどうか、環境因子など多因子なのです。

そしてどれか単一の細菌が何か悪さをしているわけではありません。

この多因子によって、細菌叢のバランス、脱灰と再石灰化のバランスが崩れることによって起きます。

どっかから感染するとかいうものでもありえません。


“ 疾患というものではなく、プロセスである “

Dental caries : The Disease and its Clinical Management

Fejerskov O  Kidd E .Blackwell Munksgaard . 2003






ではどう予防していくことができるのでしょうか。


重要なことは、

①適切なブラッシング (フッ化物を含めた)

②個々のリスク (なりやすさ)

③食べるものの摂取の仕方 (糖類、炭水化物)


これをみんなで考えて改善していくことです。

ただし、個々のリスクを評価していくことは非常に難しいです。

なりやすい人、なりにくい人、がいるわけです。

では、どれくらいなりやすいのか。。。言及することは非常に難しいです。


ただし、文献がヒントを与えてくれます。


初期う蝕から象牙質に達するまで、56年かかる。

Caries Incidence and Lesion Progression from Adolescence to Young Adulthood

: A Prospective 15-Year Cohort Study in Sweden

Mejare I et, al . Caries Research .1998


この報告では、エナメル質を通過して象牙質に達するまで56年かかることが報告されています。これよりもはやいスピードで進行する人、する場合は、リスクが高い可能性があります。逆も然りです。


さらに、象牙質を通過して歯髄に達するのは1年ほどであることも報告されています。

これをもって、象牙質に達したう蝕は早めに修復をした方がいいと考えています。


ではエナメル質内のう蝕はどう治療するべきなのでしょうか。(初期う蝕)

ここで答えれる正解はありません。

それは、そのう蝕状況、患者さんの望み、環境、ボクらの経験などで、治療の選択が変わってくるからです。


ただし、削らないで管理できるとすればそれに越したことはないです。

なぜならば、修復したものは永遠にはもたないことも報告されています。

負のスパイラルに入ります。

Crowns and extra-coronal restorations:Considerations when planning treatment 

D. J. Jacobs , J. G. Steele and R. W. Wassell


いわゆる削って詰める。。。修復。これだけが治療ではありません。

適切なブラッシングを指導して、アドバイスすること。

削らない選択をして、患者さん、衛生士さん一緒に管理を行っていくこと。

これも立派な治療です。

重要なのは管理の仕方です。

放置と管理は違います。


う蝕には今まさに進行していっているのか、止まっているのか。

そのどちらなのかが非常に重要です。

これをう蝕の活動性と言います。

どういうう蝕の状態なのか、これが管理において非常に重要です。





みなさんこの上の写真、右と左、どちらが活動性で、どちらが非活動性でしょうか。

実は左のう蝕は active(活動性) で、右のう蝕は inactive(非活動性) です。

つまり左のう蝕はただいま進行中です。右は停止しています。

非常に重要です。

どちらなのかで治療の選択が変わってきます。



復習です。

う蝕は疾患ではなくプロセスであり、管理していくもの

Kiddたちはこれを強調しています。



したがって、一緒に考え、管理をしていくことで、う蝕の進行を出来るだけ止める、

遅らせることができるはずです。


それをこの30年の報告が教えてくれています。

The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, 

caries and periodontal disease in adults

Results after 30 years of maintenance

Axelsson P , et al . J Clin Periodontol . 2004


適切な管理を一緒に行っていけば、歯の喪失は防げるはずです。

メインテナンスの重要性をこの報告は教えてくれています。

逆に言えば、通院してもらって管理していかなければ、救えない可能性があることになります。


衛生士さんと一緒に、頑張って安定した口腔内を維持していきましょう。


まとめますが、

う蝕の予防は、個々のリスクに合った選択をするべきで、

適切なブラッシングに加え、間食の仕方、フッ化物の使用などに気をつけていく必要があるのです。


ただし、リスクは変化します。

ある環境の変化を境に、リスクが高くなることもあれば、逆に下がることもあります。

良くない方に変化しても、また戻すことはできます。

重要なのは変化する可能性があることを認識し、今の状況を常に把握し続けていくことです。メインテナンスの重要性です。

Importance of early determination of caries risk

Koch G . Int Dent . 1988




余談ですが、母乳はう蝕の直接的な原因にはなりません。

驚かれたと思いますが、この認識を間違って解釈してる場合が多々あります。

実は母乳だけではう蝕にはなりません。

Breastfeeding and early childhood caries. Review of the literature,

recommendations, and prevention

B. Branger , et al . Caries Research . 2019


Breastfeeding and dental health 

GOV . UK


母乳はいわゆる乳糖です。

ビフィズス菌がこの乳糖を代謝して酢酸を出しますが、

弱酸であり、これでは歯は脱灰しません。


母乳だけではう蝕にはならない


したがって、う蝕になるから母乳ははやくやめろと言うのは全く科学的根拠のない、

母子への思いやり不足です。

Breastfeeding は立派なコミュニケーションです。


ただし、口腔内が適切なブラッシングができていない場合、甘いものをよく食べている場合、酸性の状態であるとすると、そこに母乳が関係してくると脱灰は加速されるのではないか。

という結論になっています。

いずれにせよ、適切なブラッシングと間食は気をつけよう。

これに変わりはないのです。


それではまた。

ボクは雨男ではありません。








2021年5月10日月曜日

まだ未成熟!?生えたばかりの6歳臼歯!

 こんにちは。平井です。

朝晩は冷える日もありますが、昼間は暑い日が増えてきました。

うちの子ども達は『プールを出してよ!水遊びしたい!』と

騒いでいます。笑


なかなか出かけることができない日が続いていますが、

密を避け、気をつけながら、

子ども達を外で遊ばせています。






最近やっと息子の6歳臼歯が生えてきました。


一番奥で半分だけ見えているのが6歳臼歯です。

生えたばかりの歯は、歯の表面が十分に硬くなっていません。

そのため虫歯になりやすく、急速に進行してしまいます。

磨きにくい場所にあるので、お家の方の仕上げ磨きが必要です。

虫歯にならないように

お子さんも3ヶ月から4ヶ月おきの定期検診をお勧めします。



これからどんどん暑くなりそうです。

体調管理にお気をつけください。