2020年9月11日金曜日

歯並び と 虫歯 の関係


みなさんこんにちわww 前川です。
なかなか情勢が落ち着かない今、秋から冬にかけての不安がつのりますね。。。


さて、今回は、“歯並びと虫歯の関係” の文献的な考察を紹介します。
結論から言います。

“ 歯並びと虫歯のできやすさ “

これに 強い関連性は見出されていません
え?! と思いましたね?  きっとそう思ったと思います。

文献的に歯並びと虫歯の関連性の強い科学的根拠は示されていません。
文献をいくつか紹介しますが、


     Causal relation between malocclusion and caries.
     Helm S, Petersen PE . Acta Odontol Scand .1989

     Dental crowding as a caries risk factor: A systematic review
     Hend Salah Hafez .et al . AJO-DO . 2012


これらの報告によると、歯列不正と虫歯の関連性を調べていますが、
歯列不正(歯の重なり、デコボコ) があると虫歯になりやすいのかを調べると、
関係なかった。という結論になっています。

わかりやすく言うと、
歯並びがデコボコしていると虫歯になりやすいのかを調べたら、
そんなことはなく、綺麗に並んでいてもデコボコしていても、
虫歯のできやすさに差はなかった。という報告です。

この背景には、虫歯は現在、多因子疾患と考えられているからです。
ブラッシングももちろん重要です。
それだけでなく、個々のリスク、甘いもの・炭水化物の摂り方、フッ化物、
生活習慣、社会背景、教育などたくさんの要因で虫歯になってしまうのです。






理論上歯並びが綺麗に並んでいても、この多因子疾患という考えのもとに、
その要素のどこかに問題があれば虫歯になってしまうし、
一方、歯列不正があっても、このさまざまな要素をクリアしていれば、虫歯には
なりにくいはずです。

したがって、ボクも神山先生も、歯がデコボコだと虫歯になりやすいから矯正治療をやった方がいいよ!!
なんてオススメすることは絶対にありません。
evidence  base で考えるとそういう風には断言できないからです。

矯正治療をオススメする場合は基本的に、矯正治療をやることで、機能的に有利に働くであろうという根拠があってオススメします。
もちろん主観的に審美的な要求、客観的に審美的な改善が見込める場合もオススメします。

ただし、文献上差はないということになっていますが、実際は歯並びがデコボコしていると、磨くのが大変なのは明らかだと思うし、ボクもそう思っています。

最後に、矯正治療を行う場合には、ある一定以上のブラッシングレベル
に達すること条件となります。
その理由は、矯正治療を行うことで、虫歯や歯周病になってしまう、
または悪化してしまうと元も子もないからです。
そして、最も重要なのは、その口腔内、いい状態の口腔内を、ずっと維持して
いけるように、いい習慣を身につけていくこと。にあります。




文献を紹介しますが、


     Incidence of white spot formation after bonding and banding
     Gorelick L .Am J Orthod .1982

     Does the Duration of Fixed Orthodontic Treatment Affect Caries Activity 
     among Adolescents and Young Adults?
     Pinto. Caries Res .2018


固定性の矯正治療を行うと、矯正治療を行なっていない人よりも脱灰が進んで
しまったという報告です。





装置が付くと、非常に複雑な構造のため、プラークが
たまりやすくなってしまいます。
その結果、上の写真のように矯正治療を行ったら虫歯になってしまった
という報告です。
したがって、矯正治療を行う前に、びっちり磨いておける環境づくりが重要に
なってくるのです。

矯正治療には、ブラッシングの大変さ、期間、コストなど、乗り越える
ハードル
はありますが、それでもやる意義がある場合にボクらはオススメするのです。



もし、虫歯になりやすいからという理由で矯正を勧めたり、ブラッシングが適切に行えない環境で矯正治療を行なったりそういう場面が存在するとしたら、
それは何のための、誰のための矯正治療なんでしょうか。。。

それではまた。
See you next time.
Have a good weekend everyone.